鉄道コンテナコンシェルジュ

CONCIERGE COLUMN

通運とマル運と大阪合同通運。
~ 梅田駅発ベンチャー企業「合通ロジ」のはじまりのはじまり ~

戦争が終わり自由主義経済への転換期、陸運行政の民主化も進みます。昭和25年(1950年)に「通運事業法」が施行され、これまで日本通運様に一元化されていた小運送免許が、一般運送業者にも開放されることになりました。

この時、新たに小運送免許を取得した業者は新免事業者と呼ばれ、その多くが丸印の中に「運」の文字を入れたマークを会社のシンボルマークなどに用いたため「マル運」系業者と呼ばれるようになりました。現在の全通系(全国通運業連合会)事業者の始まりですね。

わたしたち合通ロジも、新免事業者として「大阪合同通運株式会社」という社名で1950年4月に設立、翌月開業しました。通運事業は、わたしたちの会社の祖業であり、当社にとって核となる事業です。今回は、当社の創成期を整理していきますので、お付き合いください。

さて、前回のコラムでも触れましたが、当時、全国一の貨物取扱を誇った大阪梅田駅には、通運事業新規免許の申請が殺到します。40数社が申請したようです。国鉄側は、1駅あたり1業者の免許基準を建前にしていましたから、1業者への調整は大変だったようです。免許を申請した会社にとっては、新しいビジネスチャンスですので、そう簡単には引けませんよね。

そして調整の結果、4社まで絞られましたが、この4社が一歩も譲らない。このままでは免許が遅れるばかりということから、最終的に、免許を申請した会社が提携して新会社を設立し、申請を一本化するという対応策がとられました。この時、設立された新会社が、大阪合同通運です。

当時の資料には、「初めての通運免許申請による激しい競願のなかで、新会社を発足させて申請を一本化するという“産みの苦しみ”を経たスタートだった」と記されています。通運業界の開放-競願申請-申請の一本化調整-免許取得-新会社設立という苦難の経過をたどった新しい通運会社の発足だけに、業界や京阪神産業界に注目されたようです。

このような混乱の末、従業員が20数名、リヤカー1台、肩引車1台、小型トヨペット1台でスタートしたものの、運ぶ荷物が一個もない。渉外するにも行くところがない。通運業の知識がない。もし荷物があっても運ぶ自動車もない。ないないづくし、あるのは“ヤル気”と肩引車とリヤカー。「マル通さんの下請けでっか」と荷主に聞かれ、説明で日が暮れるというような状況だったそうです。

こうしてスタートした大阪合同通運は、徐々に貨物の取扱量を増やしていくことになりますが、その背景を考えてみます。

一つは、社会の情勢です。朝鮮動乱(1950年6月)をきっかけに、特需が増大し、1955(昭和30)年の高度経済成長の幕開けといわれる神武景気、1959(昭和34)年の岩戸景気へと続いたことが挙げられます。ちなみに東京オリンピックは1964年(昭和39年)ですね。この頃は、鉄道、自動車、海運のいずれも慢性的な輸送力不足状態が続いていました。道路の舗装状態も悪く、自動車の性能も悪かったため、鉄道貨物輸送への依存度は高かったのでしょう。

二つめは、混載貨物の取り扱いに力を入れたことが挙げられます。当時の貨物輸送は、小口混載貨物と車扱(しゃあつかい)貨物がありました。 混載貨物は、通運業者が複数荷主の小口貨物を1車単位に取りまとめて輸送するものです。車扱貨物は、貨車を1車単位で貸し切って大口の積み荷を扱う輸送形態です。かつて車扱貨物は鉄道輸送の中心であり、石炭、石灰石、セメント、石油、農産品や工業品などが、原料供給地域から発送されていました。例を挙げると、今でも毎日のように、北海道の農産物やミルクが大阪地区などに輸送されています。 一方、小口混載貨物は、三大都市圏を中心とする商工業地帯・消費地において大きな発達を見せました。大阪地区は混載のメッカだったこという地域的な要因もありました。

最後は、なんと言っても「無から有を生ずる気構え」で心をひとつに意欲を燃やし未知の世界への挑戦を誓った社員の気概、オーナーシップでしょう。当時の資料では、「作業現場には、商売感覚もみなぎっていた。荷物の積み卸しという、与えられた仕事をこなすだけではなく、どうすれば会社の稼ぎになるかという、営業意欲が作業員の念頭にはあった。だから、ない荷物(予定していない荷物)を積むことに誇りをもっていた」と記されています。今の当社があるのは、このような先人の熱い思いや努力があってのことですね。

次回は、高度経済成長期を経て、大阪合同通運株式会社から株式会社合通へと社名変更したあたりについて整理していこうと思います。
今回も、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

*参考文献
・競争的環境下における鉄道貨物輸送の変遷 岡田 清
・近代の大阪を中心とした鉄道利用小口混載網の形成 森田 耕平
・合通50年のあゆみ
・「道はてしなく」札幌通運の50年
・高崎通運50年誌
・山形陸運50年史
・通運事業の歴史 熊木茂夫 通運情報社 2016/1
・史料対談 語りつぐ輸送史 小平亨 輸送経済新聞社 1972/4
・史料対談 語りつぐ物流史 小平亨 輸送経済新聞社 1985/6
・史料対談 語りつぐ物流史Ⅲ 小平亨 輸送経済新聞社 1996/3
・物流業を築いた傑物たち 小平亨 輸送経済新聞社 1994/1
国土交通省HP

鉄道コンテナについてお問い合わせ

鉄道コンテナ輸送についてお気軽にご相談ください。